前回の記事では、ネットワーク・インフラエンジニアが多数在籍する大手SIerの平均年収を過去5年間遡って調査しました。
今回も記事では、同じくらい重要な情報である「従業員数」、「平均年齢」、「平均勤続年数」をご紹介していきます。
平均年収、従業員数、平均年齢、平均勤続年数は転職活動をする上で、売上高や営業利益と同様に参考になる情報のひとつです。
日本全体の上場企業の平均(IT業界以外も含む)とも比べてみたところ、結構おもしろいことがみえてきましたので是非最後まで読んでみてください。
それでは見ていきましょう。
Table of Contents
ネットワーク・インフラSIerの平均年収・従業員数・年齢・勤続年数
まず最初に、ネットワーク・インフラエンジニアの多数在籍する大手SIer18社の平均給与、従業員数、平均年齢、勤続年数を一挙にみていきましょう。
全社共通して、2021年度の有価証券報告書をもとに記載しています。
大手SIerの給与・従業員数・年齢・勤続年数
会社名 | 平均年収 | 従業員数 | 平均年齢 | 平均勤続年数 |
CTC | 933万 | 4,451人 | 40.7歳 | 13.4年 |
KEL | 723万 | 421人 | 40.2歳 | 12.7年 |
SCSK | 752万 | 8,357人 | 43.6歳 | 18.4年 |
日立製作所 | 890万 | 29,850人 | 42.6歳 | 19.2年 |
富士通 | 865万 | 32.026人 | 43.8歳 | 19.6年 |
NEC | 829万 | 20,589人 | 43.7歳 | 18.9年 |
NECネッツエスアイ | 774万 | 4,996人 | 44.1歳 | 16.8年 |
ネットワンシステムズ | 825万 | 2,090人 | 39.9歳 | 8.9年 |
TIS | 717万 | 5,838人 | 40.7歳 | 14.8年 |
日本ユニシス | 808万 | 4,407人 | 46.1歳 | 21.0年 |
NTTコミュニケーション | 930万 | 2,496人 | 41.8歳 | 16.7年 |
ソフトバンク | 820万 | 18,173人 | 40.1歳 | 12.7年 |
KDDI | 948万 | 11,353人 | 42.8歳 | 17.6年 |
IIJ | 718万 | 2,214人 | 37.4歳 | 8.8年 |
NRI | 1225万 | 6,507人 | 40.5歳 | 14.7年 |
フューチャー | 793万 | 392人 | 34.0歳 | 5.6年 |
日鉄ソリューションズ | 855万 | 3,259人 | 39.8歳 | 12.7年 |
NTTデータ | 841万 | 11,955人 | 38.9歳 | 14.8年 |
【業界別】SIer 平均年収・従業員数・年齢・勤続年数
ランキング形式で一気に羅列すると少しみにくかったので、ここからは業界別に整理してご紹介していきます。
まずSIerの分野をざっくり以下の6業界に分けてみました。本当はこれ以外にも金融系グループ会社や外資系企業など幅広く調べたかったのですが、正確なデータを集めることが難しかったのでここでは上げていません。
代表的なSIerの業界
- 商社系SIer
- メーカー系SIer
- 独立系SIer
- キャリア系SIer
- コンサル系SIer
- ユーザ系SIer
商社系 SIer
会社名 | 平均年収 | 従業員数 | 平均年齢 | 平均勤続年数 |
CTC | 933万 | 4,451人 | 40.7歳 | 13.4年 |
KEL | 723万 | 421人 | 40.2歳 | 12.7年 |
SCSK | 752万 | 8,357人 | 43.6歳 | 18.4年 |
まず最初に、商社系SIerを見ていきましょう。
CTCやKELやSCSKはネットワーク・インフラ業界のSIerではどこも有名で、商社ならではの機器販売にとどまらず、付加価値として提供されるシステムインテグレートの品質が高いことで評判です。
ほかにも丸紅ITソリューションズ、三井情報(MKI)、三菱電機インフォメーションシステムズ、日商エレクトロニクス(双日)など、他の商社もSIerを保有しています。
平均年収は伊藤忠グループのCTCが業界でもトップクラスです。平均年齢や平均勤続年数は他の企業と比較して一般的な数字ですね。
メーカー系 SIer
会社名 | 平均年収 | 従業員数 | 平均年齢 | 平均勤続年数 |
日立製作所 | 890万 | 29,850人 | 42.6歳 | 19.2年 |
富士通 | 865万 | 32.026人 | 43.8歳 | 19.6年 |
NEC | 829万 | 20,589人 | 43.7歳 | 18.9年 |
NECネッツエスアイ | 774万 | 4,996人 | 44.1歳 | 16.8年 |
メーカー系のSIerは、B to Cを中心に家電製品なども展開していますので世間一般の認知度が高い会社です。
特徴的なのは、従業員数と平均勤続年数でしょう。他のIT企業と違って幅広いビジネスを展開しているので従業員の多さは納得ですが、どちらかといえば平均勤続年数の長さが目立ちます。
新卒一括採用&終身雇用の文化がいまだに根強く残っている日本的な企業なのでしょう。ただ、最近は早期退職制度を積極的に推進したり、週休3日制を導入したり、特定分野の新卒を破格の初任給で雇用したりなど、変化を起こそうとしている姿勢は外部からも見てとれます。
電機連合の中でも常にトップメーカーともいえる日立製作所は、やはり他社に比べても平均年収が高めです。近年は東芝、パナソニック、シャープなど家電に強いメーカーの経営が厳しい現状がありますが、日立やNECのB to Bビジネスは堅調に盛り返していますね。
あらゆる業界の顧客に対して、ネットワーク・インフラだけでなく、レイヤの高いサービスも多数提供していますので、ひとつの企業で取り囲んだビジネスができるところが強みです。
独立系 SIer
会社名 | 平均年収 | 従業員数 | 平均年齢 | 平均勤続年数 |
ネットワンシステムズ | 825万 | 2,090人 | 39.9歳 | 8.9年 |
TIS | 717万 | 5,838人 | 40.7歳 | 14.8年 |
日本ユニシス | 808万 | 4,407人 | 46.1歳 | 21.0年 |
独立系SIerは、マルチベンダーを柔軟に組み合わせたフラットな目線で顧客にシステムインテグレートができる企業群です。
ネットワンシステムズは平均勤続年数が他社に比べて明らかに短いのですが、最近の連続した不祥事で営業やエンジニアが離れてしまっていたりするのでしょうか?
と思って過去7年くらいの有価証券報告書もみてみましたが、ずっと平均勤続年数は6〜10年くらいで推移していましたので、もともと離職率が高めの会社でした。
近年のわが国は雇用の流動性を推進していますので、勤続年数が短いことが必ずしも悪いこととはいえません。ただ、他社に比べると居心地の良さは期待できないかもしれませんね(笑)。
とはいえネットワンシステムズの売上高や営業利益は続伸していますし、平均年収も業界の中でも高い方なので、隠れた働きやすい会社の可能性もあります。
この辺りは転職エージェントに直接確認したり、口コミサイトをみることでいろいろとわかってくるかもしれませんね。
下記のブラック企業を見抜く方法も合わせて参考にしてください。
キャリア・通信系 SIer
会社名 | 平均年収 | 従業員数 | 平均年齢 | 平均勤続年数 |
NTTコミュニケーション | 930万 | 2,496人 | 41.8歳 | 16.7年 |
ソフトバンク | 820万 | 18,173人 | 40.1歳 | 12.7年 |
KDDI | 948万 | 11,353人 | 42.8歳 | 17.6年 |
IIJ | 718万 | 2,214人 | 37.4歳 | 8.8年 |
キャリア系SIerの代表格はNTT、ソフトバンク、KDDIの3社です。ここに加えて、日本のISPとして有名なインターネットイニシアティブ(IIJ)も上げてみました。
大手3社はさすがに高年収ですね。就職難易度も高いことで有名です。
NTTグループは戦略ごとにグループ会社が多数存在しているので、もし転職活動で検討する際は、その会社ごとでもう少し詳細まで調べる必要がありそうですね。
IIJはずっと業績が右肩上がりに成長していますし、それに比例して株価も上昇しています。サービスシフトにも積極的ですし、成長企業なのでこれから先もっと年収が伸びてくるかもしれません。
コンサル系 SIer
会社名 | 平均年収 | 従業員数 | 平均年齢 | 平均勤続年数 |
NRI | 1225万 | 6,507人 | 40.5歳 | 14.7年 |
フューチャー | 793万 | 392人 | 34.0歳 | 5.6年 |
コンサル系SIerというカテゴリにしましたが、野村総合研究所(NRI)は日本のSIerランキングでもトップに君臨する企業です。
アクセンチュアやIBMのような外資系企業や、日系ではNECグループのアビームコンサルティングも有名ですね。
日本でビジネスを展開している外資企業はだいたいコンサルティングが必要なので、もしコンサル分野で活躍したければ外資企業への転職も検討したいところです。
外資企業は日系に比較して明らかに年収が高い企業が多いので、ビズリーチなどの外資に強い転職エージェントを利用して転職活動をするのがよいでしょう。
ネットワーク・インフラエンジニアの方におすすめしている転職エージェントは下記の記事で詳しくまとめています。
私は27歳の時に作業療法士という医療職からインフラ&ネットワークエンジニアにキャリアチェンジしました。マイナビ転職を利用してインフラエンジニアに就職した1社目は、年収270万円のブラック企業でした。今思えば、「転職サ[…]
ユーザ系 SIer
会社名 | 平均年収 | 従業員数 | 平均年齢 | 平均勤続年数 |
日鉄ソリューションズ | 855万 | 3,259人 | 39.8歳 | 12.7年 |
NTTデータ | 841万 | 11,955人 | 38.9歳 | 14.8年 |
ユーザ系SIerといっても、一言でまとめるのが大変難しかったので、ここではネットワーク・インフラ業界でも有名な2社のみ上げてみました。
ユーザ系は幅が広いので、他にもみずほ情報総研、オリックスシステム、トヨタシステムズ、トッパン・フォームズ、三菱ケミカルシステム、JR東日本情報システムなど、上げ出したらキリがありません。
そのためユーザ系SIerを一概に語ることはできませんので、各社の本業をみて興味のある会社を探していくのがよいでしょう。
上場企業全体とIT業界の年収・年齢の比較
今回は、ネットワーク・インフラエンジニアが多数在籍する18社の大手SIerの情報をご紹介してきました。最後に、本日ご紹介した18社の平均と、日本の上場企業全体の平均を比較してみたいと思います。
上場企業全体との比較
上場企業全体 | ネットワーク・インフラ業界 | |
平均年収 | 603万(※1) | 847万 |
従業員数 | 1479人(※1) | 8,549人 |
平均年齢 | 41.3歳(※1) | 41.1歳 |
平均勤続年数 | 11.9年(※2) | 14.9年 |
※1:東京商工リサーチ
※2:独立行政法人 労働政策研究・研修機構
ネットワーク・インフラ業界のSIerは年収が高い
上場企業全体 | ネットワーク・インフラ業界 | |
平均年収 | 603万(※1) | 847万 |
※1:東京商工リサーチ
まず最初に声を大にして言えることは、IT業界の年収は他業界に比べて高いです。
前回の記事でIT企業の過去5年間平均年収の推移を調査しましたが、18社調査した中で17社は直近の年収が過去5年間の平均年収を上回っていました。
つまり、IT企業はここ数年で平均年収がさらに右肩上がりになっています。
コロナウイルスの感染拡大によって日本全体でDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されている背景もあり、ITの需要は高まり続けています。そこに加えて深刻な人材不足が起きていますので、ITエンジニアの年収が上がっていくトレンドはしばらく続くでしょう。
IT企業の平均年齢は上場企業全体と比較してほぼ同じ
上場企業全体 | ネットワーク・インフラ業界 | |
平均年齢 | 41.3歳(※1) | 41.1歳 |
※1:東京商工リサーチ
IT企業の平均年齢は、日本全体の上場企業と比較してあまり変わりませんでした。
なんとなくIT企業は若い人が多いと思っていましたが、全然そんなことがありませんでしたので少し意外でした。
IT業界では「35歳転職限界説」や「エンジニア40歳限界説」といったものが以前から有名でしたが、最近ではすっかり聞かなくなった用語です。
30代後半〜40代前半は、大手企業だとちょうどマネージャーに抜擢される人が増えてくる年齢です。年齢とともに責任は大きくなりますが、その分やりがいや給料が比例して上がっていくといいですね。
IT業界の平均勤続年数は長い
上場企業全体 | ネットワーク・インフラ業界 | |
平均勤続年数 | 11.9年(※2) | 14.9年 |
※2:独立行政法人 労働政策研究・研修機構
IT企業なので他の業界と比較して雇用の流動性が高いと思っていましたが、実際は勤続年数は上場企業全体に比べて3年も長かったです。
IT企業の中には、メーカー系SIerのように、新卒一括採用&終身雇用といった日本的な企業もありますので、そういった企業が平均を押し上げているのかもしれません。
IT企業は変化に柔軟な業界なので、これから数年かけて勤続年数は短くなっていくかもしれません。
市場価値を上げながらキャリアアップをしていく優秀なエンジニアにとって、平均勤続年数が下がって雇用の流動性が高まる風潮は期待すべきトレンドといえます。
まとめ
今回は、ネットワーク・インフラエンジニアが活躍する日本の大手SIer企業の「従業員数」、「平均年齢」、「平均勤続年数」をご紹介してきました。
日本の上場企業全体との比較からも分かった通り、IT業界の他業種に比較して明らかに上昇しています。
これからも成長をするIT企業はたくさん出てくることでしょうし、そういった成長企業で働くことはやりがいにも繋がっていきます。
どこかの企業に固執するのではなく、柔軟な働き方でキャリアアップしていくことでチャンスをたくさん掴めそうですね。
特定の企業で求められる特殊スキルではなく、市場価値を上げられるキャリアを意識して働いていきましょう。
本日も最後まで読んでくださり、ありがとうございました!