2020年2月にシスコ技術者認定試験の大幅な改訂が行われてから2年が経ちました。
大きな変更でしたので、そもそもの新試験の体系・旧資格からの振替・更新の方法など、正直ちゃんと把握できていない方(私です)も多いかと思います。
この記事では、シスコの資格試験が新しくなったことで要は何が変わったか?という点をあらためて確認していきたいと思います。
Table of Contents
新しいCisco認定試験はどう変わった?
まずCisco技術認定試験の旧体系と新体系の違いをみていきましょう。絵にしてみると以下のような違いがあります。
CCNAが再び1つに集約したことや、ソフトウェア分野でDevNetが創設されたことが目につきますが、パッと見ただけでは細かいところまでよくわからないですよね。
一緒にひとつずつみていきましょう。
インフラストラクチャとソフトウェアの2コーストラック
まず最初に、新認定試験の体系では「インフラストラクチャ」と「ソフトウェア」という2つの分野にコースが分岐しました。
これまでのシスコ認定資格の根幹となるネットワークインフラを問われる分野を「インフラストラクチャ」として踏襲しつつ、新たに「ソフトウェア(DevNet)」分野が新設されたかたちです。
近年はネットワーク・インフラ業界でも自動化やプログラマビリティの注目が高まっており、シスコ自身もこのソフトウェア分野に力を入れていることが伺えます。
新たに創設されたDevNet(ソフトウェア)は、ネットワーク・インフラをさらなる高度利用につなげるための開発技術者のベンチマーク試験です。
DevNetの試験では、SDN、ネットワークプログラマビリティ、Automationといったソフトウェアを用いるネットワーク制御やデバイス制御の知識・技能が問われます。
インフラストラクチャとソフトウェア、この2枚看板の認定制度が今回の改定の目玉ともいえるでしょう。
CCENTの廃止し(新たなエントリー試験はCCTへ)
旧試験ではエントリーレベルとしてCCENTがありましたが、今回の改定で残念ながら廃止となりました。
CCENTが2007年に創設されて以来、ICND1→ICND2といった2科目でのCCNA合格を目指すことができましたが、この取得方法がなくなってしまいました。
これからアソシエイトレベルのCCNA・CyberOps Associate・DevNet Associateの取得を目指す場合は、1試験での合格が必要です。
ちなみにエントリーレベルとして新たにCCT(Cisco Certified Technician)という資格ができましたが、これをとってもCCNAは取れませんし、もちろんCCNAの前提条件となっているわけではありません。
スペシャリストレベルの創設
エントリーレベルであったCCENTがなくなったかわりに、スペシャリストレベルが新たに加わりました。7分野に分かれてコア試験とコンセントレーション試験があります。1分野に複数のコンセントレーション試験があるので、試験数がいっきに増えた感じがします。
コア試験やコンセントレーション試験の合格1つごとに、名乗れるスペシャリスト認定が増えていきます。
詳しくは「スペシャリストレベルの創設」の章で後述しますが、スペシャリスト試験を組み合わせて取得することでCCNPの認定を受けることができますし、コア試験はCCIEの筆記試験の代わりにもなります。
下位資格の取得を前提条件から撤廃
旧資格体系でCCNPを取得するには、同一技術トラックのCCNAを取得することが前提条件としてありましたが、新体系ではCCNAの取得が必須要件から削除されました。
すなわちCCNAをもっていなくても、いきなりCCNPへチャレンジすることができます。
すでにネットワーク・インフラストラクチャ経験を積んできたプロフェッショナルレベルのエンジニアには嬉しい改訂になったかもしれません。
ちなみにCCIEは旧体系のときからいきなりCCIEチャレンジができましたし、もちろん改定後も同様にいきなりCCIEへチャレンジ可能です。CCIE様だけは来るもの拒まず(笑)
デザイン試験のコーストラックの変更【CCDAとCCDPがなくなった】
CCDA・CCDP・CCDEは、ネットワーク設計を問われる技術トラックとして旧試験体系に組み込まれていましたが、今回の新体系への改訂でCCDAとCCDPは姿を消してCCDEのみとなりました。
デザインの試験がまったくなくなったわけではなく、スペシャリスト試験では2つの技術トラックで合計3つのデザイン試験が用意されています。
新体系におけるデザイン試験
【スペシャリストレベル】
- Enterprise Design (300-420 ENSLD):エンタープライズトラック
- Enterprise Wireless Design (300-425 ENWLSD):エンタープライズトラック
- Data Center Design (300-610 DCID):データセンタートラック
ちなみに、旧CCDAホルダーは「CCNA」へ、旧CCDPホルダーは「CCNPエンタープライズ」へと自動で振替がされますが、エキスパートレベルのCCDEは独立したまま残っています。
CCDEは年に4回しか試験日がなく、CCIE界でも最難関のひとつとされています。日本のCCDEホルダーは、シスコの加藤さんと、ルートリフの岡山さんくらいしか聞いたことがありません。
新CCNAの変更点
ここからは新試験への移行にともなう、CCNAの変更点を重点的にみていきます。
CCNAは1試験に統合された
まず最初に目に飛び込んできたのは、CCNAが再び1試験に統合されたことです。
直近の試験体系ではR&S、Security、SP、Collaboration、DC、Cloud、Industrialの各技術トラックでアソシエイトレベルのCCNAが存在していましたが、全て新CCNAへの振替がされました。
この業界でずっとCisco試験をみてきた人からしたら、昔のCCNAみたいに戻ったのね、という感想になるかと思います。
旧CCNA(アソシエイト) | 新CCNA (アソシエイト) |
CCNA R&S(Routing & Switching) | CCNA |
CCNA Security | |
CCNA SP(Service Provider) | |
CCNA Collaboration | |
CCNA DC(Data Center) | |
CCNA Cloud | |
CCNA Industrial | |
CCDA |
問題数が増えて試験時間も増えた
新しいCCNA試験では、学習範囲にセキュリティ技術の概要およびソフトウェアを用いた自動制御といった内容が新たに盛り込まれています。
1つに統合されたことによって、CCNAの試験範囲はかなり広くなっています。ネットワーク技術で満点を取っても、新分野を落とすと合格できないような配点になっています。
CCNAは改訂のたびにどんどん試験範囲が広がって難しくなっていく印象です。
問題数は50〜60問だった旧試験から、102問前後まで一気に増えています。試験時間もこれまで90分だったものが120分まで拡張しました。
- 旧CCNA:問題数50〜60問、時間90分
- 新CCNA:問題数102問、時間120分
新しいCCNAは120分で102問解かなければなりません。
1問1分強と考えると慌ててしまいそうですが、次で紹介する通り新CCNAではシミュレーション問題とシナリオ問題がなくなりました。
出題形式は選択問題とドラッグ&ドロップ問題のみとなりますので、慌てずに1問ずつ解いていくことが大事でしょう。
CCNAからシミュレーション問題とシナリオ問題がなくなった
新しいCCNAではシミュレーション問題とシナリオ問題がなくなりました。出題形式は選択問題とドラッグ&ドロップ問題のみとなります。
Routing & Switchingの範囲を含むCCNAといえば、ACLやVLAN設定といったシミュレーション問題が定番でしたので、選択式とドラッグ&ドロップ試験のみへの改訂は個人的にもびっくりです。
【重要】新CCNA試験ではシミュレーション問題とシナリオ問題がなくなった
選択問題とドラッグ&ドロップ試験のみになりました
CCNAの料金が安くなった
旧CCNAは受験料が39,600円でしたが、新CCNA試験は33,600円と6,000円安くなりました。
世界的なインフレーションのご時世に安くなるのは朗報です。ただ、安くなったとはいえ3万円超えなので、一発合格ならまだしも複数回にわたって自分で払うのはきついことに変わりはないですね。。
未経験の方の場合、CCNAの受験料を負担してくれる会社に就職してから取得を目指したり、合格率を上げてくれるようなITスクールで勉強してから確実に合格を目指すような戦略がいいでしょう。
未経験の方がCCNA合格を目指す方法は別の記事でまとめたいと思います。
より広範な試験範囲になった
CCNAが再びひとつの資格に集約されたことにより、より広範囲な試験範囲になりました。
ルーティングとスイッチングの割合が減った一方で、無線やセキュリティの重要性が上がるとともに、なんといっても新たな試験範囲である「自動化とプログラマビリティ」が追加されています。
新CCNAの試験範囲
- ネットワークの基礎(20%)
- ネットワークアクセス(20%)
- IPコネクティビティ(25%)
- IPサービス(10%)
- セキュリティー基礎(15%)
- 自動化とプログラマビリティー(10%)
ネットワーク技術で満点を取っても、セキュリティや新分野を落とすと合格できないような配点になっています。より広範な学習が必要になったことでCCNAの難易度は確実に上がっていそうですね。
Cisco スペシャリストレベルの創設
新体系では、スペシャリストレベルの認定が明確化されました。1試験の合格で、その分野のスペシャリストとして認定されるイメージです。
すなわち試験科目の合格ごとに、名乗れるスペシャリスト認定が増えていきます。たくさん取得していくことで職務経歴書の資格の項目が豪華になりそうですね(笑)
このスペシャリスト試験の組み合わせ(同一技術トラックのコア試験+1つのコンセントレーション試験)で、新CCNPを取得することができます。
実際のところ、スペシャリスト試験を目標にして受験するというよりも、CCNPを取得する過程の中での通過点という捉え方と考えたほうがいいかもしれません。
7技術のコアとコンセントレーション試験
スペシャリストレベルの試験では、7つの技術トラックに分けて、1つのコア試験と複数のコンセントレーション試験が用意されています。
コンセントレーション試験がたくさんあるので、いっきに試験数が増えた感じがします。
スペシャリスト試験の技術トラック
- エンタープライズ
- セキュリティ
- サービスプロバイダ
- コラボレーション
- データセンター
- Cyber Ops
- DevNet
コアとコンセントレーション試験の組み合わせでCCNP合格
スペシャリスト認定は、同一トラックのコアとコンセントレーション試験を組み合わせることにより、CCNPの認定を受けることができます。
CCNPエンタープライズであれば、コア試験の「Enterprise Core (350-401 ENCOR)」の合格と、下記の複数あるエンタープライズトラックのコンセントレーション試験の中のひとつを合格するとCCNPエンタープライズが認定されます。
例えば・・・CCNPエンタープライズの合格基準は?
【コア試験】必須
- Enterprise Core (350-401 ENCOR)
【コンセントレーション試験】下記のうちどれか1つ
- Enterprise Advanced Infrastructure Implementation (300-410 ENARSI)
- Enterprise SD-WAN Implementation (300-415 ENSDWI)
- Enterprise Design (300-420 ENSLD)
- Enterprise Wireless Design (300-425 ENWLSD)
- Enterprise Wireless Implementation (300-430 ENWLSI)
- Enterprise Automation and Programmability(300-435 ENAUTO)
コア試験はCCIE筆記試験の代わりにもなる
CCIE専用の試験科目だったCCIE筆記試験(Written Exam)は、同じ技術トラックのコア試験に代替されます。
コア試験の合格をしたあとに、コンセントレーション試験を合格するとCCNPが認定されますが、Labに進めばCCIEが認定されるというわけです。
エンタープライズの技術トラックを例に整理すると下記の通りになります。
- エンタープライズコア(ENCOR)+エンタープライズコンセントレーションのうちひとつ=CCNPエンタープライズ
- エンタープライズコア(ENCOR)+CCIE Lab Exam = CCIE エンタープライズ
上記でわかる通り、CCNA→CCNP→CCIEと段階を踏んで試験を受ける人にとって、コア試験はCCNPの時点で取得することになりますので、実質的にCCIEの筆記試験はない(すでに合格している状態)ということになります。
新CCNPの変更点
続いて旧CCNPから新CCNP(プロフェッショナルレベル)への移行にともなう変更点を確認していきましょう。CCNPのトラック自体はあまり変わりませんが、組み合わせで取得するコンセントレーション試験が増えたことによって取得までの自由度が上がりました。
5+2に集約された
旧CCNP(プロフェッショナルレベル)の資格が新CCNPに移行したことにより下の図のような集約がされました。
Cyber Opsプロフェッショナルと、ソフトウェア分野のDevNetプロフェッショナルは今回の新試験体系で新たに登場した資格です。
旧CCNP(プロフェッショナル) | 新CCNP (プロフェッショナル) |
CCDP | CCNP Enterprise |
CCNP R&S | |
CCNP Wireless | |
CCNP Security | CCNP Security |
CCNP SP(Service Provider) | CCNP SP(Service Provider) |
CCNP Collaboration | CCNP Collaboration |
CCNP DC | CCNP DC |
CCNP Cloud | |
– | CyberOps Professional |
– | DevNet Professional |
同じトラックのコンセントレーション1つと、コア資格合格でCCNPを認定
スペシャリスト試験のコアと、複数あるコンセントレーションの中のいずれか1つを取得することでCCNPを取得することができます。
- 必須科目:コア試験、120分(各トラック共通)、問題数90問程度?
- 任意科目:コンセントレーション、90分、複数のなかからひとつ
旧CCNPでは3〜4科目の合格が要件となっていましたが、新体系では2科目で取得することが可能になります。
実際のイメージとしては、コア試験がそのトラックで中心となる2科目を1つにまとめたような構成になっています。
次に各技術トラックごとのコア試験とコンセントレーション試験を具体的にみていきましょう。
①CCNPエンタープライズ
エンタープライズコア(ENCOR)と、いずれかのコンセントレーション1つを取得するとCCNP Enterpriseが取得できます。
赤字にしている「Enterprise Automation and Programmability(ENAUTO)」はDevNetのスペシャリスト試験ですが、こちらとの組み合わせでもCCNPエンタープライズを取得することができます。
ちなみにエキスパート試験はCCIE Enterprise Infrastructureと、CCIE Enterprise Wirelessです。
CCNPエンタープライズの合格基準
【コア試験】必須
- Enterprise Core (350-401 ENCOR)
【コンセントレーション試験】下記のうちどれか1つ
- Enterprise Advanced Infrastructure Implementation (300-410 ENARSI)
- Enterprise SD-WAN Implementation (300-415 ENSDWI)
- Enterprise Design (300-420 ENSLD)
- Enterprise Wireless Design (300-425 ENWLSD)
- Enterprise Wireless Implementation (300-430 ENWLSI)
- Enterprise Automation and Programmability(300-435 ENAUTO)
②CCNPセキュリティ
セキュリティズコア(SCOR)と、いずれかのコンセントレーション1つを取得するとCCNP Securityが取得できます。
赤字にしている「Security Automation and Programmability (300-735 SAUTO)」はDevNetのスペシャリスト試験ですが、こちらとの組み合わせでもCCNPセキュリティを取得することができます。
後続のエキスパート試験はCCIE Securityです。
CCNPセキュリティの合格基準
【コア試験】必須
- Security Core (350-701 SCOR)
【コンセントレーション試験】下記のうちどれか1つ
- Network Security Firepower (300-710 SNCF)
- Network Security VPN Implementation (300-730 SVPN)
- Email Content Security (300-720 SESA)
- Web Content Security (300-725 SWSA)
- Security Identity Management Implementation (300-715 SISE)
- Security Automation and Programmability (300-735 SAUTO)
③CCNPサービスプロバイダ
サービスプロバイダコア(SPCOR)と、いずれかのコンセントレーション1つを取得するとCCNP SP(Serviec Provider)が取得できます。
赤字にしている「Service Provider Automation and Programmability (300-535 SPAUTO)」はDevNetのスペシャリスト試験ですが、こちらとの組み合わせでもCCNPサービスプロバイダを取得することができます。
後続のエキスパート試験はCCIE SP(Service Provider)です。
CCNPサービスプロバイダの合格基準
【コア試験】必須
- Service Provider Core (350-501 SPCOR)
【コンセントレーション試験】下記のうちどれか1つ
- Service Provider Advanced Routing Implementation (300-510 SPRI)
- Service Provider VPN Services Implementation (300-515 SPVI)
- Service Provider Automation and Programmability (300-535 SPAUTO)
④CCNPコラボレーション
コラボーレーションコア(CLCOR)と、いずれかのコンセントレーション1つを取得するとCCNP Collaborationが取得できます。
赤字にしている「Collaboration Automation and Programmability (300-835 CLAUTO)」はDevNetのスペシャリスト試験ですが、こちらとの組み合わせでもCCNPコラボレーションを取得することができます。
後続のエキスパート試験はCCIE Collaborationです。
CCNPコラボレーションの合格基準
【コア試験】必須
- Collaboration Core (350-801 CLCOR)
【コンセントレーション試験】下記のうちどれか1つ
- Collaboration Applications Implementation (300-810 CLICA)
- Collaboration Call Control & Mobility Implementation (300-815 CLACCM)
- Collaboration Cloud & Edge Implementation (300-820 CLCEI)
- Collaboration Automation and Programmability (300-835 CLAUTO)
- Collaboration Automation and Programmability (300-835 CLAUTO)
⑤CCNPデータセンター
データセンターンコア(DCCOR)と、いずれかのコンセントレーション1つを取得するとCCNP DC(Data Center)が取得できます。
赤字にしている「Data Center Automation and Programmability (300-635 DCAUTO)」はDevNetのスペシャリスト試験ですが、こちらとの組み合わせでもCCNPコラボレーションを取得することができます。
後続のエキスパート試験はCCIE Data Centerです。
CCNPデータセンターの合格基準
【コア試験】必須
- Data Center Core (350-601 DCCOR)
【コンセントレーション試験】下記のうちどれか1つ
- Data Center Design (300-610 DCID)
- Data Center Operations (300-615 DCIT)
- Data Center ACI Implementation (300-620 DCACI)
- Data Center SAN Implementation (300-625 DCSAN)
- ACI Advanced Implementation (300-630 DCACIA)
- Data Center Automation and Programmability (300-635 DCAUTO)
⑥CyberOpsプロフェッショナル
Cyber Opsコア(CBRCOR)と、コンセントレーションを取得するとCyberOps Professionalが取得できます。
Cyber Opsは旧試験体系ではアソシエイトレベルまでしか存在していませんでしたので、Cyber Opsプロフェッショナルは新しいプロフェッショナル資格の1つとなりました。
Cyber Opsトラックのエキスパート試験はいまのところありません。
CyberOpsプロフェッショナルの合格基準
【コア試験】必須
- CyberOps Using Cisco Security Technologies (350-201 CBRCOR)
【コンセントレーション試験】
- Conducting Forensic Analysis and Incident Response Using Cisco Technologies for CyberOps (300-215 CBRFIR)
⑦DevNetプロフェッショナル
DevNetコア(DEVCOR)と、いずれかのコンセントレーション1つを取得するとDevNet Professionalが取得できます。
DevNetは新資格体系の新しいソフトウェア分野の試験です。詳しくは後述しますが、エンタープライズ・セキュリティ・サービスプロバイダ・コラボレーション、データセンタートラックでのDevNet試験(赤字)も登場し、この組み合わせで別トラックのCCNPを取得することもできます。
後続のエキスパート試験はシスコの公式サイトでは「今後発表予定」となっていますので、いずれCCIE DevNetが新資格として発表されることが予測されています。
DevNetプロフェッショナルの合格基準
【コア試験】必須
- DevNet Specialist – Core (350-901 DEVCOR)
【コンセントレーション試験】下記のうちどれか1つ
- DevNet Specialist – DevOps (300-910 DEVOPS)
- DevNet Specialist – IoT (300-915 DEVIOT)
- DevNet Specialist – Webex (300-920 DEVWBX)
- Enterprise Automation and Programmability (300-435 ENAUTO)
- Security Automation and Programmability (300-735 SAUTO)
- Service Provider Automation and Programmability (300-535 SPAUTO)
- Collaboration Automation and Programmability (300-835 CLAUTO)
- Data Center Automation and Programmability (300-635 DCAUTO)
旧CCNPの振り替え
旧試験体系で取得したCCNPの各トラックは、上記の通り新CCNPに振替がされました。CCDPはなくなり、CCNPエンタープライズに振り替えられます。
旧CCNP (プロフェッショナル) | 新CCNP(プロフェッショナル) |
CCNP RS(Routing&Switching) | CCNP Enterprise |
CCNP Wireless | |
CCDP | |
CCNP Security | CCNP Security |
CCNP SP(ServiceProvider) | CCNP ServiceProvider |
CCNP Collaboration | CCNP Collaboration |
CCNP DC(DataCenter) | CCNP DC(DataCenter) |
CCNP Cloud |
ソフトウェア分野(DevNet)の組み合わせでもCCNPが取れる
インフラストラクチャ分野(エンタープライズ、セキュリティ、サービスプロバイダ、コラボレーション、データセンター)のコア試験と、ソフトウェア分野(DevNet)のコンセントレーション試験を組み合わせることにより、インフラストラクチャ分野のCCNP資格を取得することができます。
コア試験 | 組み合わせで取得するDevNetスペシャリスト試験 | 取得できるプロフェッショナル資格 |
DevNetコア | +DevNet Specialist DevOps | DevNet Professional |
+DevNet Specialist IOT | ||
+DevNet Specialist Webex | ||
Enterpriseコア | +Enterprise Automation and Programmability | CCNPエンタープライズ |
Securityコア | +Security Automation and Programmability | CCNPセキュリティ |
Service Providerコア | +Service Provider Automation and Programmability | CCNPサービスプロバイダ |
Collaborationコア | +Collaboration Automation and Programmability | CCNPコラボレーション |
Data Center コア | +Data Center Automation and Programmability | CCNPデータセンター |
新CCIEの変更点
CCIEは筆記試験と実技試験の合格が必要ということに変わりはありませんが、試験の内容に変更がありました。旧CCIE試験の振替や、試験の変更点を確認していきましょう。
旧CCIEの振替
旧試験体系で取得したCCIEは、下記の図の通りに新CCIEに自動で振り替えられました。CCIE R&SがCCIE Enterprise Infrastructureになり、CCIE WirelessがCCIE Enterprise Wirelessに名称変更されています。
あとはソフトウェアトラックのDevNetで、エキスパートレベルのラボ試験が準備中とアナウンスされています。そのうちCCIE DevNetが登場するのでしょう。
旧CCIE(エキスパート) | 新CCIE(エキスパート) |
CCIE R&S | CCIE Enterprise Infrastructure |
CCIE Wireless | CCIE Enterprise Wireless |
CCIE Security | CCIE Security |
CCIE SP(Service Provider) | CCIE SP(Service Provider) |
CCIE Collaboration | CCIE Collaboration |
CCIE DC(Data Center) | CCIE DC(Data Center) |
ー | DevNetのラボ試験が準備中 |
新CCIE 筆記試験(Written Exam)- コア試験に代替
CCIE専用の試験科目だったCCIE Written Examは、同じ技術トラックのスペシャリストレベルで指定されるコア試験に代替されます。
たとえばCCIE Enterprise InfrastructureとCCIE Enterprise Wirelessの筆記試験は、エンタープライズコア試験(ENCOR)になります。
コア試験の合格をしたときに、コンセントレーション試験を合格するとCCNPが認定されますが、Labに進めばCCIEが認定されるというわけです。
エンタープライズの技術トラックを例に整理すると下記の通りになります。
- エンタープライズコア(ENCOR)+エンタープライズコンセントレーションのうちひとつ=CCNPエンタープライズ
- エンタープライズコア(ENCOR)+CCIE Lab Exam = CCIE エンタープライズ
上記でわかる通り、CCNA→CCNP→CCIEと段階を踏んで試験を受ける人にとって、コア試験はCCNPの時点で取得することになりますので、実質的にCCIEの筆記試験はない(すでに合格している状態)ということになります。
新CCIEラボ試験は2モジュール構成へ
旧ラボ試験では技術トラックごとに試験のセクション構成が違っていましたが、新ラボ試験では2つのモジュール構成にかわりました。この2モジュール構成は全トラック共通です。
たとえばCCIE R&Sの筆記試験はTroubleshooting 、Diagnostic、Configurationの3セクションに分かれていましたが、新たに登場したCCIE Enterprise InfrastructureではDesignとDeploy, Operate and Optimizeの2モジュールに分かれています。
モジュール1:Design(設計)
- 試験時間:180分
最初のデザイン(設計)モジュールは、ドキュメントベースで設計要件を読み解き、最適なネットワーク設計を導いていくセクションになっています。旧CCDEラボ試験(シナリオ試験)に似た形式で出題されると予想されていますが、これまでにない出題形式なので詳しい難易度は不明です。
ただ、私たち日本で活躍するエンジニアにとっては難関試験になることが予測されています。なぜならシスコ試験では恒例の「シスコ英語の読解が非常に難しい」こと、「試験のベースとなる設計思想が欧米的である」ことなどが挙げられるからです。
新バージョン試験に挑戦する猛者たちのナレッジが増えていかないとまだわかりません。
モジュール2:Deploy, Operate and Optimize
- 試験時間:300分
モジュール2をさらに分解すると「Deploy」と「Operate and Optimize」に分かれます。
Deploy(展開)では、設計仕様や顧客の要件に従ってネットワークを構築していきます。試験のトピックに沿ってトラブルシューティングなどをしながらネットワークを実装していかなければなりません。
Operate and Optimize(運用と最適化)では、ネットワークヘルス、ネットワークパフォーマンスの監視、サービス品質の向上、高可用性、信頼性、セキュリティを満たしたネットワークの構成が求められます。
DeployもOperate and Optimizeも実機ベースで指定の要件に沿った構築操作をすすめていくことが要求されますので、旧CCIEラボ試験のConfigurationセクションのような形式で出題されると予想されています。
ただ、新ラボ試験の新たな要件として、両セクションとも自動化とネットワークプログラマビリティのスキルを用いてプログラムを用いて実装を進めていかなければならなくなりました。
旧ラボ試験では、シェルコマンドを用いてpingを打ったり、EEMを用いいて簡易な自動作業をさせるような程度の要求でしたが、新試験ではもっと具体的なスクリプトで機器の動作を制御するような要求が出てくるのではないと予測されています。
筆記試験の有効期限
旧CCIE筆記試験では、有効期限の前半18ヶ月以内に1回目のラボ試験を受験すること、1回目のラボ試験が不合格の場合、12ヶ月以内に次のラボ試験を受験すること、という制約がありましたが、新体系ではこの制約がなくなっています。
新筆記試験では各トラックのコア試験に振り替えられるので、実質的な有効期限は3年間となり、その3年間のうちにラボ試験の合格を目指せばいいことになります。
ラボ試験の空席状況
CCIEラボ試験は世界的に空席が少ないようです。これまで通り、学習計画を立てたら早めにラボ試験を予約しておくと安心です。
東京会場のキャンセル状況は、前日の毎朝9時に反映されているようです。空席チェックは朝9時にしてみるとよいでしょう。
さいごに
ネットワーク・インフラストラクチャ分野で昔からエンジニアたちの挑戦を受けてきたシスコの技術認定試験ですが、最近はアップデートの頻度が上がってきています。とくに今回のアップデートは大幅な改訂となりました。
旧試験から新試験への移行にともない変更されたことをまとめてきましたが、1つの記事では語りきれないほどたくさんの変更がされています。
これから関連記事を増やしてシスコ新試験の情報発信に力を入れていきたいと思います。
引き続き、よろしくお願いいたします。